2026.7.2
【番外編】路線価が上がると、わが家の相続税も上がる?自宅・実家を持つ人が知っておきたい基本

毎年7月1日に国税庁から発表される「路線価」。
ニュースで「路線価が上昇」「地価が上がった」と聞くと、自宅や実家を所有している方の中には、「うちの土地も高くなったのだろうか」「将来の相続税も増えるのでは」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
路線価は、相続税や贈与税を計算する際に使われる土地評価の基準です。そのため、路線価が上がれば、土地の相続税評価額が上がる可能性があります。
ただし、「路線価が上がった=必ず相続税が増える」という単純な話ではありません。相続税には基礎控除や特例があり、家族構成や財産全体の状況によって結果は大きく変わります。
大切なのは、ニュースの数字だけで判断するのではなく、「わが家の場合はどうなのか」を確認することです。
路線価とは、相続税や贈与税のための土地評価基準
路線価とは、道路に面する土地1㎡あたりの評価額のことです。国税庁が毎年公表しており、その年に相続や贈与で取得した土地を評価する際に使われます。
土地の価格には、いくつかの種類があります。
実際の売買で決まる「実勢価格」、固定資産税の計算に使われる「固定資産税評価額」、国が公表する「地価公示価格」、そして相続税や贈与税の計算に使われる「路線価」です。
ここで注意したいのは、路線価は「この価格で売れる」という金額ではないという点です。国税庁によると、路線価は1月1日を評価時点として、地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定められています。
つまり、路線価は売却価格そのものではなく、相続税評価のための基準です。とはいえ、土地の価値を知るうえで重要な目安になるため、自宅や実家を所有している方にとっては見逃せない情報です。
路線価が上がると、相続税も必ず上がるのか
結論から言えば、路線価が上がっても、相続税が必ず増えるとは限りません。
相続税は、土地だけで決まるものではありません。自宅や実家の土地・建物に加え、預貯金、株式、生命保険金、その他の財産などを合計し、そこから債務や葬式費用などを差し引いて計算します。
さらに、相続税には基礎控除があります。
基礎控除額は、
3,000万円+600万円×法定相続人の数
で計算されます。
たとえば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円です。正味の遺産額がこの範囲内であれば、原則として相続税はかかりません。
そのため、路線価が上がって土地評価額が増えても、財産全体が基礎控除内に収まっていれば、相続税に影響しないケースもあります。
一方で、都市部や駅に近い土地、面積の広い実家、複数の不動産を所有している方は注意が必要です。これまで相続税がかからないと思っていた家庭でも、路線価の上昇によって課税対象に近づく可能性があります。
「自宅だから大丈夫」とは限らない理由
相続税の相談でよくある誤解が、「自宅しかないから相続税は関係ない」というものです。
たしかに、預貯金が少なく、自宅だけが主な財産という家庭では、相続税がかからないケースもあります。しかし、土地の評価額が高い地域では、自宅や実家だけで基礎控除を超えることもあります。
特に注意したいのは、昔から所有している土地です。
購入時はそれほど高くなかった土地でも、駅周辺の開発、商業施設の増加、観光需要、住宅需要の高まりなどによって、長い年月の間に評価が上がっていることがあります。
ご本人は「普通の家」と思っていても、相続税評価では思った以上に高くなることがあります。
相続が発生してから初めて土地評価を確認し、「想像より評価額が高かった」と気づくケースは珍しくありません。
路線価の上昇は、税金そのものよりも、「わが家の財産状況を見直すきっかけ」として捉えることが大切です。
小規模宅地等の特例を知っておく
自宅や実家の相続で重要になるのが、「小規模宅地等の特例」です。
これは、一定の条件を満たす場合に、被相続人の自宅敷地などについて、相続税評価額を大きく減額できる制度です。
特定居住用宅地等に該当する場合、330㎡までの部分について評価額を80%減額できる可能性があります。
たとえば、土地の評価額が5,000万円であっても、条件を満たせば評価額が1,000万円まで下がる可能性があります。これは相続税の計算に大きな影響を与える制度です。
ただし、この特例は自動的に使えるものではありません。
誰が相続するのか、相続人が配偶者なのか同居親族なのか、相続後も住み続けるのか、土地の利用状況はどうかなど、細かな要件があります。
「自宅だから当然使える」と思っていると、実際には適用できないこともあります。
そのため、相続が起きてから考えるのではなく、事前に制度の概要を知り、専門家に確認しておくことが大切です。
路線価の発表は、相続準備を始めるタイミング
路線価のニュースを見ると、「税金が上がるかどうか」だけに目が向きがちです。
しかし、本当に大切なのは、今の不動産価値を把握することです。
相続対策というと、節税の話をイメージされる方が多いかもしれません。しかし実際には、税金だけでなく、家族間の話し合い、遺産分割、空き家対策、売却や活用の方針など、幅広い準備が必要です。
特に不動産は、現金のように簡単に分けることができません。
自宅を誰が相続するのか、住み続けるのか、売却するのか、兄弟姉妹でどのように公平性を保つのか。こうした問題は、相続が発生してからでは話し合いが難しくなることもあります。
路線価が発表される7月は、自宅や実家の価値を確認する良い機会です。
「いくらで売れるか」だけでなく、「相続税評価ではどのくらいになるのか」「将来、家族でどう扱うのか」を考えるきっかけにしてみてください。
まとめ
路線価は、相続税や贈与税の計算に使われる重要な土地評価の基準です。
路線価が上がれば、土地の相続税評価額が上がる可能性があります。ただし、相続税は土地だけで決まるものではなく、財産全体、法定相続人の数、基礎控除、小規模宅地等の特例などによって結果が変わります。
そのため、「路線価が上がったから相続税も必ず上がる」と考える必要はありません。
一方で、「自宅しかないから大丈夫」と決めつけるのも危険です。特に都市部や人気エリア、昔から所有している土地では、思っている以上に評価額が高くなっている場合があります。
大切なのは、早めに現状を知ることです。
自宅や実家の路線価を確認し、不動産の価値を把握することで、相続税の見通しだけでなく、家族で話し合うべき課題も見えてきます。
路線価の発表は、不安になるためのニュースではありません。将来の相続に備え、家族の大切な資産をどう守り、どう引き継ぐかを考えるためのきっかけです。
まずは、自宅や実家の不動産価値を確認することから始めてみましょう。
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