相続と生前贈与はどちらが得?不動産承継で税負担を減らす方法を解説

2026.5.11

【番外編】相続と生前贈与はどちらが得?不動産承継で税負担を減らす方法を解説

「子どもに家を残したい」「相続税が心配だから、元気なうちに贈与したほうがよいのでは」50代以降の資産保有者にとって、不動産の承継は避けて通れないテーマです。
ただし、不動産は現金と違い、評価額・登記費用・将来の売却税・管理負担まで含めて考える必要があります。単純に「生前贈与=節税」とは限りません。この記事では、相続と贈与の違いを整理し、税負担を抑えるための現実的な考え方を解説します。

 


 

相続と生前贈与は、かかる税金が違う

 

不動産を家族へ引き継ぐ方法には、大きく「相続」と「生前贈与」があります。

相続は、所有者が亡くなった後に財産を承継する方法。生前贈与は、所有者が生きているうちに財産を渡す方法です。

相続の場合、相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除があります。財産総額がこの範囲内であれば、相続税がかからないケースもあります。

一方、贈与税は年間110万円の基礎控除を超えると課税対象となり、贈与額が大きいほど税率が上がる累進課税です。直系尊属から18歳以上の子や孫への贈与には特例税率がありますが、それでも高額な不動産を一括贈与すると大きな税負担になりやすい点に注意が必要です。

さらに、不動産では税金以外のコストも見逃せません。相続による所有権移転と贈与による所有権移転では、登録免許税や不動産取得税の扱いが異なります。一般的に、生前贈与では不動産取得税が課される一方、相続では原則として不動産取得税はかかりません。

 


 

相続が有利になりやすいケース

 

不動産承継では、「あえて相続まで待つ」ほうが有利なケースがあります。

代表的なのは、相続税の基礎控除内に収まる場合です。たとえば、法定相続人が3人なら基礎控除は4,800万円です。財産総額がこの範囲に収まるなら、急いで贈与して贈与税や登記費用を負担するより、相続で承継したほうが合理的な場合があります。

また、自宅土地や事業用・貸付用の土地では、「小規模宅地等の特例」が使える可能性があります。一定要件を満たすと、特定居住用宅地等では330㎡まで評価額を80%減額できるため、不動産を現金化せずに保有していたほうが相続税評価上有利になることがあります。

ただし、特例には同居・居住継続・事業継続など細かな要件があります。「自宅だから必ず80%減額できる」というものではありません。ここは税理士への確認が必須です。

 


 

生前贈与が効果的なケース

 

一方で、生前贈与が有効な場面もあります。

たとえば、将来値上がりが見込まれる不動産を早めに次世代へ移したい場合です。贈与時点の評価で移転できれば、その後の値上がり分を贈与者の相続財産から外せる可能性があります。

また、相続発生後の争いを避けたい場合にも、生前贈与は有効です。不動産は現金のように簡単に分けられません。誰が住むのか、売るのか、共有にするのかで、相続人同士の意見が割れることがあります。生前に意思を明確にしておくことは、節税以上に大きな意味を持つ場合があります。

近年注目されているのが「相続時精算課税制度」です。2024年1月1日以後の贈与から、この制度にも年間110万円の基礎控除が設けられました。また、累計2,500万円までの特別控除があり、超えた部分には20%の贈与税がかかります。最終的には相続時に精算する仕組みです。

ただし、一度選択すると同じ贈与者からの贈与について暦年課税に戻れないため、安易な選択は禁物です。

 


 

将来売却するなら「取得費」も確認する

 

不動産承継で見落とされやすいのが、将来売却時の税金です。

生前贈与で不動産を受け取った場合、原則として贈与者の取得費を引き継ぎます。昔安く買った不動産を子どもが売却すると、売却益が大きくなり、譲渡所得税が高くなる可能性があります。

相続の場合も取得費は原則として引き継ぎますが、相続税が課税されており、相続開始の翌日から相続税申告期限の翌日以後3年以内に売却するなどの要件を満たせば、「取得費加算の特例」を使える可能性があります。

つまり、「もらう時の税金」だけでなく、「売る時の税金」まで含めて比較することが重要です。

 


 

税負担を減らすには、節税より出口戦略を考える

 

これからの不動産承継で大切なのは、「相続か贈与か」だけではありません。
本当に考えるべきなのは、その不動産を将来どう活かすかです。

子どもが住む予定がない家、築年数が古く修繕費がかかる家、空き家になる可能性が高い家は、相続後に負担になることがあります。固定資産税、管理費、修繕費、草木の手入れ、近隣対応など、不動産には持ち続けるコストがあります。

一方で、駅近や需要のあるエリア、賃貸需要が見込める物件であれば、売却せずに活用する選択肢もあります。

大切なのは、次の3点を事前に整理することです。

  1. 家族がその不動産を使う予定があるか
  2. 売却した場合にいくらになるか
  3. 贈与・相続・売却のどれが家族全体にとって合理的か

この比較をせずに贈与だけを進めると、税金は抑えたつもりでも、結果的に家族へ負担を残してしまうことがあります。

 


 

まとめ

 

不動産の承継では、「生前贈与が得」「相続が得」と一概には言えません。

相続税には基礎控除があり、小規模宅地等の特例が使える可能性もあります。一方、生前贈与には、将来値上がりする資産を早めに移せることや、家族間の争いを防ぎやすいというメリットがあります。

ただし、不動産は税金だけで判断してはいけません。登録費用、不動産取得税、将来売却時の譲渡所得税、管理負担、空き家リスクまで含めて考える必要があります。

これからの相続対策で重要なのは、単なる節税ではなく「出口戦略」です。
残すのか、売るのか、貸すのか、現金化して分けやすくするのか。早い段階で不動産会社・税理士・司法書士に相談し、家族にとって最も負担の少ない承継方法を考えることが、将来の安心につながります。


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