2026.7.16
【売却編】住宅ローンが残っている家は売却できる?抵当権抹消の流れと住み替え資金の考え方

「住宅ローンがまだ残っているから、今の家は売却できないのではないか」
住み替えを考え始めた方から、このようなご相談を受けることがあります。しかし、結論からいえば、住宅ローンの返済中であっても家を売却することは可能です。
実際の不動産取引では、家の売却代金を使って住宅ローンを一括返済し、金融機関が設定している抵当権を抹消したうえで、買主へ所有権を移転する方法が一般的に行われています。
ただし、確認すべきなのは「ローンが残っているか」だけではありません。重要なのは、売却代金や自己資金によって、売却時に必要な一括返済額と諸費用を準備できるかという点です。
この記事では、住宅ローンが残っている家を売却できる仕組み、抵当権抹消の流れ、売却代金・自己資金・新たな住宅ローンをどのように整理すればよいのかを、住み替えの視点からわかりやすく解説します。
住宅ローンが残っていても、家は売却できる
住宅ローンを利用して購入した土地や建物には、一般的に金融機関の抵当権が設定されています。
抵当権とは、住宅ローンの返済が滞った場合などに、金融機関が担保となっている不動産から優先的に弁済を受けるための権利です。
住宅ローンが残っている間は抵当権も残るのが通常ですが、抵当権が付いていること自体が、直ちに売却を禁止するわけではありません。
ただし、買主の立場からすると、売主の住宅ローンを担保する抵当権が付いたままの不動産を購入することは大きなリスクになります。そのため、一般的な売買契約では、売主が抵当権を抹消して買主へ引き渡すことが条件となります。
つまり、重要なのは「売却前にローンを完済しておかなければならない」ということではなく、売買代金の決済時までに住宅ローンを完済し、抵当権を抹消できる見通しが立っていることです。
住宅ローンを完済しただけでは、登記簿上の抵当権が自動的に消えるわけではありません。金融機関から必要書類を受け取り、法務局へ抵当権抹消登記を申請する必要があります。法務局も、完済後に速やかに抹消登記を申請するよう案内しています。
抵当権抹消と引き渡しはどのように進む?
住宅ローンが残っている家の売却では、売買代金の決済、ローンの一括返済、抵当権抹消登記の申請、所有権移転登記の申請を連携させて進めます。
一般的な流れは、次のとおりです。
まず、売却活動を始める前後に、住宅ローンを借りている金融機関へ現在の残高と一括返済に必要な金額を確認します。一括返済日によって利息額が変わるほか、金融機関によっては繰上返済手数料などが必要になる場合があります。
売買契約が成立したら、決済日に合わせて金融機関へ一括返済の手続きを申し込みます。金融機関によって必要な連絡時期や書類が異なるため、早めの確認が必要です。
決済日には、買主から受け取った売買代金の一部または全部を使って住宅ローンを一括返済します。金融機関側で完済が確認されると、抵当権抹消登記に必要な書類が交付されます。
その後、司法書士が抵当権抹消登記と所有権移転登記などを法務局へ申請します。
ここで注意したいのは、決済日に抵当権抹消の「登記申請」を行うのであり、登記簿上の手続きがその場で完了するわけではないという点です。登記の完了は法務局での審査後となりますが、実務上は司法書士が必要書類や返済手続きを確認し、抵当権を確実に抹消できる状態で決済を進めます。
売主自身が金融機関、不動産会社、司法書士の手続きを個別に調整するのは容易ではありません。そのため、住宅ローンが残っている場合は、査定を依頼する段階でローン残高があることを不動産会社へ伝えておくことが大切です。
「売却価格」ではなく「手取り額」でローン残高と比較する
住み替え資金を考える際、よくある間違いが、査定価格や売却価格と住宅ローン残高だけを比較することです。
例えば、住宅ローン残高が2,500万円で、家が2,700万円で売却できたとします。
単純に考えると200万円が手元に残りそうですが、実際の売却では、次のような費用がかかる可能性があります。
・不動産会社に支払う仲介手数料
・売買契約書に貼付する印紙税
・抵当権抹消登記に関する登録免許税や司法書士報酬
・住宅ローンの一括返済手数料
・土地の測量費や建物の解体費など、物件によって必要となる費用
したがって、判断の基本となるのは、次の関係です。
売却代金-売却諸費用-住宅ローンの一括返済額=売却後に残る資金
売却後に資金が残る状態は、一般にアンダーローンと呼ばれます。残った資金は、新居の頭金、購入諸費用、引っ越し費用、仮住まい費用などに充てられます。
反対に、売却代金から諸費用を差し引いた金額より一括返済額が多い状態は、実質的なオーバーローンです。
ここで得られる重要な気づきは、「査定価格がローン残高を上回っているから安心」とは限らないことです。住み替えの可否を判断するには、査定価格ではなく、想定成約価格から諸費用を差し引いた手取り額を試算する必要があります。
なお、売却後に現金が残るかどうかと、税務上の譲渡所得が生じるかどうかは別の問題です。譲渡所得は、原則として売却代金から取得費と譲渡費用などを差し引いて計算するため、住宅ローン残高との差額だけで税金の有無を判断することはできません。マイホームの売却では、一定の要件を満たす場合に特例を利用できることがあります。
オーバーローンでも住み替えられる可能性はある
売却代金だけでは住宅ローンを完済できない場合でも、直ちに売却や住み替えを諦める必要はありません。
代表的な方法の一つは、不足額を預貯金などの自己資金で補うことです。
例えば、売却後の手取り額が2,300万円、一括返済額が2,500万円であれば、原則として不足する200万円を自己資金で用意できれば、ローンを完済して抵当権を抹消できます。
もう一つの選択肢が、住み替えローンです。
住み替えローンとは、現在の家を売却しても返し切れない住宅ローン残債と、新居の購入資金をまとめて借りる仕組みのローンです。
ただし、すべての金融機関が取り扱っているわけではありません。また、新居の価値を超える金額を借りる可能性があるため、年収、勤続年数、既存借入、返済負担率、購入物件の担保評価などについて、通常の住宅ローンより慎重に審査される傾向があります。
借りられたとしても、借入額と毎月の返済額が大きくなる可能性があります。住み替え後の家計まで考え、教育費、老後資金、修繕費などを含めて無理のない返済計画を立てなければなりません。
なお、自己資金でも不足額を補えず、住み替えローンも利用できない場合、金融機関の承諾なしに抵当権を残したまま通常の方法で売却することは困難です。
返済の継続自体が難しくなっている場合には、金融機関の同意を得て売却する「任意売却」という方法もあります。ただし、任意売却は通常の住み替え手段とは性質が異なり、売却後も債務が残る場合があります。住宅金融支援機構も、返済継続が困難な場合の手続きとして任意売却を案内しています。
住み替え成功のポイントは「売る・買う・借りる」を同時に考えること
住み替えでは、今の家の売却と新居の購入を別々に考えてしまうと、資金や日程に無理が生じることがあります。
今の家を先に売る「売り先行」は、売却金額を確認してから新居の予算を決められるため、資金計画を立てやすい方法です。一方で、新居が見つかるまで仮住まいが必要になる可能性があります。
新居を先に購入する「買い先行」は、希望する物件を確保しやすく、引っ越しも進めやすい方法です。しかし、現在の住宅ローンが残った状態で新たなローンを組むことになるため、二重返済の期間が発生したり、新しい住宅ローンの審査が厳しくなったりする可能性があります。
どちらが適しているかは、次の条件によって変わります。
・現在の住宅ローン残高
・売却できると見込まれる価格
・利用できる自己資金
・現在の収入と毎月の返済可能額
・新居の購入価格
・売却と購入の希望時期
・仮住まいが可能かどうか
住み替えで本当に確認すべきなのは、「いくらで売れるか」だけではありません。
売却したあと、いくら残るのか。その資金を新居の購入にどう振り分け、将来どの程度の返済を続けるのか。
この一連の流れを一つの資金計画として考えることが重要です。
まとめ
住宅ローンが残っている家でも、売却代金や自己資金などによってローンを一括返済し、抵当権を抹消できれば売却できます。
一般的には、買主から売買代金を受け取る決済日に住宅ローンを一括返済し、司法書士が抵当権抹消登記と所有権移転登記を法務局へ申請します。
住み替えを考え始めたら、まず確認したいのは次の3点です。
・住宅ローンの正確な残高と一括返済額
・現在の家の現実的な売却見込み額
・売却諸費用を差し引いたあとの手取り額
売却後の手取り額でローンを返し切れない場合には、自己資金で補う方法や、金融機関によっては住み替えローンを利用する方法があります。ただし、借入可能額だけで判断せず、住み替え後も無理なく返済を続けられるかを慎重に検討することが大切です。
住み替えの目的は、単に今の家を売ることではありません。
売却・購入・住宅ローン・引き渡し時期を一体で整理し、新しい暮らしを安心して始められる状態をつくることが、本当のゴールです。
「ローンが残っているから売れない」と決めつける前に、住宅ローンの残高が分かる資料を準備し、不動産会社へ売却査定と住み替え資金のシミュレーションを相談するところから始めましょう。
税制優遇や住宅ローンの商品条件は、売却時期、金融機関、所得、物件などによって異なるため、個別案件では金融機関・税理士・司法書士への確認が必要です。
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