2026.8.10
【売却編】雨漏り・シロアリ被害のある実家は売れる?告知義務・契約不適合責任と売却価格への影響

相続した実家を久しぶりに訪ねると、天井に茶色い染みがあり、床下にはシロアリ被害らしき跡が残っていた。そんな状態を目にすれば、「もう売れないのでは」と不安になるのも無理はありません。
結論からいえば、雨漏りやシロアリ被害がある実家でも売却は可能です。ただし、被害を隠して売ることは避けなければなりません。大切なのは、慌てて高額な修繕を始めることではなく、被害の状況を調べ、分かっている事実を買主へ伝えたうえで、その家に合った売却方法を選ぶことです。
実は、売却価格を大きく下げやすいのは「被害があること」だけではありません。「どこまで傷んでいるのか分からない」という不透明さも、買主にとって大きなリスクになります。傷んだ実家の売却では、きれいに見せること以上に、状態を見えるようにすることが重要です。
雨漏りやシロアリ被害があっても実家は売却できる
雨漏りやシロアリ被害があるからといって、法律上、売却できなくなるわけではありません。
被害を開示して現状のまま中古住宅として売る方法、必要な修繕を行ってから売る方法、不動産会社に買い取ってもらう方法、建物の価値をほとんど見込まず土地を中心に評価して売る方法などがあります。
たとえば、購入後に大規模なリノベーションを予定している買主であれば、内装の傷みをそれほど問題にしないことがあります。建て替えを前提とする買主なら、建物の状態よりも、立地、土地の広さや形状、接道条件、再建築の可否などが判断材料になります。
つまり、「傷んでいる家=価値がない家」ではありません。誰に、どのような使い方を想定して売るかによって評価は変わります。
ただし、雨漏りが長く続いて柱や梁、土台まで腐食している場合や、シロアリ被害が構造部分に広がっている場合は、安全性や修繕費への影響が大きくなります。まず確認したいのは、次のような点です。
- 雨漏りは現在も続いているのか
- 雨水が入っている場所や原因は分かっているか
- シロアリが現在も活動している可能性があるか
- 柱、梁、土台などに被害が及んでいるか
- 過去に修繕やシロアリ防除を行った記録があるか
天井の染みや床の沈みといった表面だけを見て、被害の大きさを決めつけないことが大切です。
知っている被害は告知する。「不明」を「なし」にしない
個人の売主に対して、雨漏りやシロアリ被害を一律の書式で申告することを直接定めた法律があるわけではありません。しかし、不動産売買の実務では、売主が把握している建物の不具合や修繕履歴を「物件状況報告書」や「告知書」に記載し、契約前に買主へ伝えるのが基本です。
売却時に伝える内容としては、現在の被害だけでなく、過去の雨漏り、修繕した場所と時期、再発の有無、シロアリ点検・防除の履歴なども含まれます。
民法では、引き渡された不動産が種類や品質などについて契約内容に適合していない場合、買主は要件に応じて、修補などの追完、代金減額、損害賠償、契約解除を求められることがあります。これが「契約不適合責任」です。
また、契約書に売主の契約不適合責任を免除する特約を設けても、売主が知りながら買主へ告げなかった事実については、その責任を免れることができないと民法第572条で定められています。
「現状有姿で売る」と契約書に書けば、何も説明しなくてよいわけではありません。現状有姿は、基本的に現在の状態で引き渡すという意味であり、それだけで契約不適合責任がすべて免除されるとは限らないからです。
反対に、被害を告知しただけで自動的に責任がなくなるわけでもありません。雨漏りやシロアリ被害の範囲、修繕するのか現状で引き渡すのか、引き渡し後の責任をどこまで負うのかを契約書に具体的に反映し、売主と買主の認識をそろえる必要があります。
相続した実家では、相続人が過去の状況を知らないことも珍しくありません。その場合は、推測で「被害なし」と記載せず、「不明」「相続後は居住していないため詳細不明」と記載します。
親族への確認、修繕工事の見積書や領収書、火災保険の申請記録、シロアリ防除の保証書、過去の写真などが残っていれば、できる限り集めておきましょう。
告知は、売却を不利にするためのものではありません。買主との認識のずれを防ぎ、引き渡し後の紛争から売主自身を守るための作業です。
売却価格は「修繕費」だけでなく「分からないリスク」に左右される
雨漏りやシロアリ被害がある住宅は、正常な状態の住宅より査定価格が低くなる可能性があります。ただし、被害があれば何%下がるという法律上・公的な一律基準はありません。
売却価格への影響は、主に次の要素によって変わります。
- 被害の範囲と深刻さ
- 修繕費や解体費
- 築年数と建物の残存価値
- 土地そのものの需要
- 買主がリフォームするのか建て替えるのか
- 追加工事が発生する可能性
- 売却までに必要な期間
「修繕見積額が200万円だから、売却価格も200万円下がる」という単純な計算にはなりません。原因や被害範囲が分からなければ、買主は追加工事の可能性まで考え、修繕見積額以上の値下げを求めることがあります。
反対に、調査報告書や修繕見積書があり、「被害はこの範囲」「必要と考えられる工事はこの内容」と整理されていれば、買主は購入後の費用を計算しやすくなります。不具合をなくせなくても、不透明さを減らすことが過度な値下げの抑制につながる場合があります。
国土交通省の「建物状況調査」は、登録講習を修了した建築士が、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について、劣化や不具合の有無を調べる制度です。木造住宅では、目視できる範囲の著しい蟻害も調査項目に含まれます。
ただし、建物状況調査は、通常移動できる場所から主に目視・計測などで確認する調査です。家具や仕上げ材で隠れた部分など、調査できない箇所が残ることがあります。雨漏りの原因やシロアリ被害の全範囲を保証するものではないため、必要に応じて雨漏り調査やシロアリ専門業者の点検を追加します。
修繕するか、そのまま売るかは「最終的な手取り額」で判断する
売却方法は、大きく三つに分けられます。
一つ目は、被害を告知し、現状のまま仲介で売る方法です。売主が先に修繕費を負担せずに済む一方、購入希望者が限られ、価格交渉も入りやすくなります。リフォームや建て替えを前提とする買主に向いた方法です。
二つ目は、調査や修繕を行ってから仲介で売る方法です。買主の不安を減らしやすくなりますが、工事費の全額を売却価格に上乗せできるとは限りません。
特に避けたいのは、原因を特定しないまま天井クロスだけを張り替えるような表面的な修繕です。再発すれば、かえって「雨漏りを隠したのではないか」と疑われる原因になります。修繕する場合は、原因調査、施工前後の写真、見積書、工事報告書、保証書などを残しておきましょう。
三つ目は、不動産会社による買取です。一般的には仲介より売却価格が低くなる傾向がありますが、修繕せずに売却できることがあり、売却期間も短縮しやすくなります。ただし、買取であっても契約条件は会社ごとに異なるため、契約不適合責任が自動的に免除されるとは限りません。
比較するときは、査定価格だけでなく、修繕費、解体費、残置物処分費、売却までの固定資産税や管理費用を差し引いた「最終的な手取り額」で判断します。
正常な状態を前提とした査定額、現状のままの査定額、修繕後の想定査定額、買取価格を並べて比較すると、実家に合った売却方法が見えやすくなります。
まとめ
雨漏りやシロアリ被害のある実家でも、売却することは可能です。
重要なのは、不具合を隠すことでも、査定前に慌てて高額な修繕をすることでもありません。まず被害の状況を確認し、「分かっていること」「分からないこと」「過去に修繕したこと」を整理することが出発点です。
そのうえで、告知内容と契約条件を明確にし、現状売却、修繕後の売却、不動産会社による買取を比較します。
傷んだ実家の価値は、建物の見た目だけでは決まりません。立地や土地需要、改修可能性、建て替え需要によっては、十分に売却できる可能性があります。
「こんな状態では相談しにくい」と思う段階こそ、早めに不動産会社へ現状を伝えてください。雨漏りやシロアリ被害は、放置するほど建物の傷みが進む可能性があります。調査や修繕を先に契約するのではなく、まず売却方法まで含めて相談することが、不要な出費と将来のトラブルを防ぐ近道です。
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