2026.5.30
【売却編】京町家は売るべき?残すべき?資産価値の考え方|相続後に後悔しない判断軸

親や祖父母から京町家を相続したものの、「自分は住まない」「でも売るのは気が引ける」と迷っている方は少なくありません。
京町家は、単なる古い家ではなく、京都の暮らしや町並みを今に伝える大切な建物です。一方で、所有し続けるには維持管理費や税金、老朽化への対応が必要です。遠方に住んでいて管理が難しい場合、空き家のまま時間が過ぎるほど、資産価値が下がったり、行政上のリスクが高まったりする可能性もあります。
大切なのは、「売るか、残すか」を感情だけで決めることではありません。現在の建物状態、立地、活用可能性、家族の将来設計を整理したうえで、現実的な選択肢を比較することです。
京町家の価値は「古さ」ではなく「活かせる状態」にある
「京町家だから価値がある」と考える方は多いですが、不動産市場で評価されるポイントはもう少し具体的です。
確かに、京町家には京都らしい外観や趣、歴史的な魅力があります。店舗、住居、事務所、宿泊施設などに活用できる場合、一般的な中古住宅とは違う需要が生まれることもあります。
しかし、すべての京町家が高く評価されるわけではありません。
資産価値に影響しやすいのは、主に次のような点です。
・建物の傷み具合
・雨漏りやシロアリ被害の有無
・接道条件
・再建築や改修のしやすさ
・駅や観光地、商業地への近さ
・店舗や賃貸として活用できる可能性
・京都市の指定制度や保全制度との関係
つまり、京町家の価値は「古いから高い」のではなく、「残しながら活かせる状態かどうか」で大きく変わります。
特に相続後に長く空き家となっている場合、見た目以上に劣化が進んでいることがあります。資産価値を守るには、早い段階で建物状態と市場価値を確認することが重要です。
空き家のまま放置すると、維持費とリスクが増えていく
相続した京町家について、最も多い判断が「とりあえずそのままにしておく」というものです。
しかし、何もしないことは、必ずしも安全な選択ではありません。
空き家でも、固定資産税、都市計画税、火災保険、庭木の手入れ、定期的な換気や清掃などの負担は続きます。さらに京町家は木造建築であるため、湿気、雨漏り、腐朽、シロアリ被害の影響を受けやすく、人が住まなくなると傷みが早く進むことがあります。
また、管理が不十分な空き家は、空家等対策特別措置法に基づき、管理不全空家や特定空家として行政指導の対象になる可能性があります。勧告を受けた場合、住宅用地に対する固定資産税等の軽減措置から外れる可能性もあります。
さらに京都市では、居住者のいない住宅を対象とする「非居住住宅利活用促進税」が令和12年度から課税開始予定とされています。すべての空き家が直ちに対象になるわけではありませんが、今後は「使っていない住宅を持ち続けること」への負担が重くなる方向にあると考えておくべきです。
空き家の放置は、現状維持ではありません。時間の経過とともに、維持費・修繕費・税負担・売却時の評価低下という形で、少しずつ資産を目減りさせる可能性があります。
売却だけではない。京町家を残すための活用方法もある
京町家を相続したとき、多くの方は「売るか、残すか」の二択で考えがちです。
しかし実際には、その中間にいくつかの選択肢があります。
たとえば、居住用賃貸として貸す方法があります。京都らしい住まいを求める方に向けて貸し出すことができれば、所有を続けながら収益を得られる可能性があります。
また、立地によってはカフェ、物販店、事務所、ギャラリーなど、町家の雰囲気を活かした事業用賃貸も考えられます。事業者が改装費の一部を負担する条件で借りたいというケースもあります。
さらに、京都市では京町家の保全・継承に向けた相談窓口や改修補助制度なども設けられています。条件に合えば、改修や保全に関する支援を受けられる可能性があります。
ただし、活用には注意点もあります。改修費が高額になる場合や、建築基準法・消防法・用途地域・近隣環境などの制約を受ける場合もあります。
そのため、「残したい」という気持ちがある場合ほど、まず専門家に相談し、活用できる建物なのか、どの程度の改修費が必要なのかを確認することが大切です。
売却は「手放すこと」ではなく、次の使い手へ引き継ぐ選択でもある
京町家を売ることに対して、後ろめたさを感じる方は少なくありません。
「親が大切にしていた家だから」
「祖父母の思い出が残っているから」
「自分の代で手放してよいのだろうか」
その気持ちはとても自然です。
ただし、誰も住まず、管理も十分にできないまま老朽化が進むことは、本当に京町家を大切にしている状態といえるでしょうか。
売却は、単に処分することではありません。町家を必要としている買主や事業者に引き継ぐことで、建物が再生され、地域の町並みの中で生き続ける可能性があります。
もちろん、すべての京町家を売るべきという意味ではありません。
家族が将来使う予定がある、維持管理できる体制がある、活用プランが具体的にある場合は、保有を続ける価値があります。
一方で、遠方に住んでいて管理が難しい、修繕費の負担が重い、相続人同士で意見がまとまらない場合は、売却も前向きな選択肢になります。
重要なのは、「売る=悪いこと」「残す=正しいこと」と決めつけないことです。
判断の第一歩は「今の価値」を知ること
京町家の売却や活用で後悔しやすいのは、判断が遅れたケースです。
数年前なら改修して使えた建物が、雨漏りや腐朽によって大きな修繕が必要になり、結果的に売却価格が下がることがあります。また、相続人が複数いる場合、時間が経つほど話し合いが難しくなることもあります。
売るか残すかをすぐに決める必要はありません。
しかし、次のことは早めに確認しておくべきです。
・現在の査定価格
・建物の劣化状況
・改修に必要な概算費用
・賃貸や店舗活用の可能性
・解体した場合と残した場合の比較
・税金や維持費の見通し
・相続人全員の意向
これらを整理することで、「何となく迷っている状態」から「選択肢を比較できる状態」へ進めます。
査定を受けたからといって、必ず売却する必要はありません。むしろ、現在の価値を知ることは、残すための判断材料にもなります。
まとめ
京町家は、京都の歴史や家族の思い出が詰まった大切な資産です。
しかし、所有し続けるには、維持管理費、修繕費、税負担、空き家リスクを冷静に見ておく必要があります。
京町家の価値は、「古い建物であること」だけでは決まりません。今後も活用できる状態か、適切に管理できるか、次の使い手に引き継げるかによって変わります。
売るべきか、残すべきか。
その答えは一つではありません。
大切なのは、感情だけで先送りせず、今の建物状態と資産価値を把握することです。早めに専門家へ相談することで、売却、賃貸、活用、保有の中から、ご家族にとって最も納得できる選択肢が見えてきます。
京町家を本当に大切にするとは、ただ所有し続けることではなく、次の時代にどう活かすかを考えることなのです。
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