26.05.09
【番外編】増え続ける空き家が不動産市場に与える影響
〜人口減少時代の家選びに必要な新しい視点〜

新聞やニュースで「空き家問題」という言葉を目にする機会が増えました。総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家数は約900万戸、空き家率は13.8%となり、いずれも過去最高を記録しています。1993年から2023年までの30年間で、空き家数は約2倍に増えました。
しかし、空き家問題は単に「古い家が余っている」という話ではありません。人口減少、高齢化、相続、住宅供給、地域の利便性など、社会全体の変化が不動産市場に表れている現象です。
これからの家選びでは、「建物が新しいか」「価格が安いか」だけでなく、「その地域が将来も選ばれ続けるか」という視点がますます重要になります。
空き家が増え続ける背景には、人口減少と相続問題がある
日本で空き家が増えている最大の背景は、人口減少と世帯構造の変化です。
かつては、住宅を建てれば次の世代が住み継ぐことが一般的でした。しかし現在は、子ども世代が都市部や別の地域で暮らしているケースも多く、親世代が住んでいた家を相続しても、すぐに住む人がいないという状況が増えています。
さらに、相続した実家を売却・賃貸・解体するにも、簡単には進まないことがあります。
たとえば、共有名義で相続人同士の意見がまとまらない、解体費用の負担が重い、思い出があり処分に踏み切れない、遠方に住んでいて管理できない、といった理由です。
その結果、誰も住まない家が長期間放置され、空き家として残ってしまいます。
特に注意したいのは、空き家が「自然に市場へ戻る」とは限らない点です。売りに出されない、貸し出されない、管理もされない住宅が増えると、地域全体の景観や防災面にも影響を与えます。
空き家の増加は、不動産価格に二極化をもたらす
空き家が増えると、不動産市場には供給過多の圧力がかかります。需要よりも住宅の数が多くなれば、買い手や借り手を見つけにくい物件は価格が下がりやすくなります。
影響を受けやすいのは、駅から遠い住宅地、公共交通の便が弱い地域、高齢化が進む郊外、再建築や接道条件に制約がある物件などです。
一方で、すべての不動産価格が一律に下がるわけではありません。
駅に近い、生活利便施設がそろっている、医療・教育環境が整っている、将来も一定の居住需要が見込める地域では、人口減少時代でも需要が維持されやすい傾向があります。
つまり、空き家の増加によって起こるのは、単純な「不動産価格の下落」ではなく、地域や物件ごとの価値の二極化です。
これからの不動産市場では、「京都市内だから安心」「持ち家だから資産になる」といった大きなくくりではなく、より細かな地域性や将来性を見る力が求められます。
京都市の空き家率は全国平均より低いが、地域差を見ることが大切
京都市については、全国とは少し異なる動きも見られます。
令和5年住宅・土地統計調査では、全国と京都府の空き家数・空き家率が増加する中、京都市は空き家数・空き家率ともに減少しました。京都市の空き家率は12.5%、空き家数は105,300戸です。
これは、京都市が早くから空き家対策に取り組んできたことも背景にあるとされています。京都市は平成26年に「京都市空家等の活用、適正管理等に関する条例」を制定し、空き家の活用や適正管理を進めてきました。
ただし、京都市全体の空き家率が下がっているからといって、すべての地域が同じ状況とは限りません。
観光地に近い地域、大学や企業が集まる地域、鉄道利便性の高い地域では一定の需要が見込まれる一方、高齢化が進む住宅地や交通利便性に課題がある地域では、今後も空き家の発生リスクがあります。
家選びでは「京都市」というブランドだけでなく、区・駅・学区・生活圏ごとの変化を見ることが大切です。
空き家問題は「管理されない不動産」のリスクも示している
空き家は、所有しているだけで価値が守られるものではありません。管理されない住宅は、建物の劣化、雨漏り、倒壊リスク、害虫・害獣、景観悪化、防犯上の不安など、周辺環境にも影響を与える可能性があります。
また、2023年12月に施行された改正空家法では、放置すれば特定空家等になるおそれのある空き家を「管理不全空家等」として、市町村が指導・勧告できる仕組みが設けられました。勧告を受けた場合、固定資産税の住宅用地特例が解除される可能性もあります。
これは、空き家が「個人の所有物」であると同時に、「地域に影響を与える存在」として扱われる時代になったことを意味します。
これからは、住まなくなった家をどう管理し、どう活用し、いつ売却するのかを早めに考えることが重要です。
人口減少時代の家選びは「地域の未来」を買う視点へ
人口減少時代の家選びでは、建物そのものだけでなく、地域の将来性を見る視点が欠かせません。
具体的には、駅やバス路線の利便性、買い物施設、医療機関、学校、災害リスク、地域コミュニティ、将来の売却しやすさなどを総合的に見る必要があります。
これまでの家選びは、「今の暮らしやすさ」が中心でした。
しかしこれからは、「10年後、20年後も暮らしやすいか」「次の買い手や借り手に選ばれるか」という視点が大切になります。
空き家が増える時代だからこそ、家の価値は建物単体ではなく、地域との関係性の中で決まっていきます。
不動産を見ることは、地域の未来を見ることでもあります。
まとめ
空き家問題は、人口減少や高齢化、相続、住宅供給の変化が重なって生まれている社会課題です。
全国では空き家数・空き家率が過去最高となる一方、京都市のように対策によって空き家率が下がっている地域もあります。ただし、同じ市内でも地域差はあり、今後はより細かなエリアごとの見極めが重要になります。
これからの不動産市場では、「家を持つこと」そのものよりも、「将来も選ばれる地域にあるか」「適切に管理・活用できるか」が大きな価値になります。
空き家が増える時代は、不動産の価値が失われる時代ではありません。
むしろ、本当に価値が残る家と地域を見極める力が、これまで以上に求められる時代だと言えるでしょう。
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