【番外編】住宅ローン金利は今後どうなる?「金利のある時代」を賢く生き抜くための必須知識

「変動金利のまま大丈夫だろうか」「今から家を買うなら、固定と変動どちらを選ぶべきか」——住宅ローンをお持ちの方、あるいはこれからご検討されている方の多くが、そのようなご不安を感じていらっしゃるのではないでしょうか。
2024年3月の日本銀行によるマイナス金利政策解除以降、3回の追加利上げにより、変動金利型住宅ローンの金利に影響を与える「政策金利」が約0.75%まで上昇しております。長らく続いた「ゼロ金利の時代」は終わりを告げ、住宅ローンを取り巻く環境は大きな転換点を迎えております。
本稿では、2026年4月時点の最新動向を踏まえながら、住宅ローン金利の「今」と「これから」を整理いたします。焦りではなく、正確な理解をもとにご判断いただけますよう、お役に立てれば幸いです。
「30年ぶりの水準」——今、住宅ローン金利に何が起きているか
日本銀行は2025年12月18〜19日に金融政策決定会合を開催し、政策金利を0.50%から0.75%へと引き上げました。0.5%を上回る政策金利水準は1995年以来、約30年ぶりとなります。
この「30年ぶり」という数字は、単なる統計上の記録ではございません。住宅ローンをご返済中の多くの借り手にとって、人生で初めてご経験される「本格的な金利上昇局面」であることを意味しております。
2026年4月現在、住宅ローン金利は変動・固定ともに上昇傾向が続いております。変動金利は、2025年12月に日銀が政策金利の追加利上げをした影響を受け、各金融機関で基準金利と最優遇金利が引き上げられました。
多くの金融機関では、2026年春に基準金利が0.25%引き上げられました。なかには0.3%程度引き上げている金融機関も見られます。変動金利は各金融機関が定める「基準日」に応じて見直されており、多くの金融機関では基準日が4月1日と10月1日に設定されているため、2026年7月の返済分から金利が反映されるケースが多いとみられます。
固定金利側も安閑としていられない状況です。 長期金利の指標である10年国債の金利は、2025年7月から上昇傾向を見せており、2026年3月末は2.3%台で推移しているため、金利を引き上げる金融機関が多くみられます。 さらに フラット35(借入期間21年以上35年以下、融資比率9割以下)の4月の最低金利は、長期金利上昇の影響を受けて2.490%(前月比+0.240)となりました。
変動・固定ともに上昇という「ダブル上昇」が現実のものとなっております。
今後の金利はどこまで上がるのか——市場と専門家の見立て
では、金利はこれからさらに上がるのでしょうか。結論から申し上げますと、「緩やかに上昇する可能性が高い」ものの、その到達点については様々な見方がございます。
公益財団法人日本経済研究センターがエコノミスト約40名を対象に実施した「ESPフォーキャスト調査」によれば、変動金利型のベースとなる政策金利は、現在の約0.75%から2026年12月末までに約1.0%まで上昇する予測が出ており、変動金利型住宅ローンも金利上昇が見込まれます。
証券会社の見通しも概ね一致しております。 野村證券は金融政策の見通しを変更し、新たなメインシナリオでは、2026年6月、同年12月、2027年6月に0.25%ポイントずつ利上げすると見込んでいます。
一方、上昇ペースには制約もございます。 一気に変動金利を2%まで上昇させる可能性は低く、物価や賃金の上昇とともに5年・10年と時間をかけて緩やかに上昇すると想定されます。なぜなら、急激な変動金利の上昇は、住宅ローン破綻の増加や不動産市場低迷のリスクが高まるためです。
また、 2026年3月の金融政策決定会合では政策金利は据え置かれており、植田総裁は中東情勢の緊迫化を受けた原油価格上昇が国内景気を下押しするリスクが新たに浮上しており、その影響を見極める必要があるとして据え置きを判断したと説明しました。ただし「景気への影響が一時的で、基調的な物価の経路に大きく影響しないのであれば利上げは可能」とも述べており、利上げの方向性自体は維持しています。
つまり、「上がり続けるが急激ではない」というのが現時点での最も蓋然性の高いシナリオです。ただし、国際情勢や為替動向次第では、このシナリオが崩れる可能性も念頭に置いていただく必要がございます。
変動か固定か——「正解」ではなく「自分に合った選択」を
「結局、変動と固定、どちらが得なのか」——多くの方が抱かれる疑問ですが、正直に申し上げますと、「どちらが得か」という問いの立て方自体に落とし穴がございます。金利の予測は、プロでさえ断言できるものではありません。選ぶべきは「将来得する選択」ではなく、「ご自身のリスク許容度に合った選択」です。
現状の数字を確認いたしましょう。 2025年12月時点での変動金利はネット銀行・メガバンクともに約0.8%、固定金利はフラット35で約2.0%であり、変動・固定の金利差は1.2%となっています。「変動金利が1.2%以上上昇するのであれば固定金利を使う方が有利」という計算になり、政策金利が2%近い水準にならないと固定が逆転しない計算です。
一方で、 変動金利で借入中の利用者の53.5%が、住宅ローンを組んだ当時と比べて金利変動リスクに対し不安を感じていることもわかっています。 数字上の損得だけでなく、「不安なく眠れるか」という精神的なコストも、ローン選択の重要な要素でございます。
また見落としがちな視点として、 変動金利で借りている人が将来固定に借り換えればよいと考えることもありますが、全期間固定金利型は変動金利型に先行して金利が上昇する可能性があり、借り換えのタイミングも慎重に検討する必要があります。 「後で固定に切り替えればよい」というお考えは、必ずしも通用しない点をご認識いただければと思います。
さらに、 金利上昇局面において、借入時点での金利は変動金利より高くても、返済期間の間金利が変わらず返済の見通しが立てやすいことから、全期間固定金利のフラット35の人気が高まっています。実際、2025年10〜12月のフラット35の申請戸数は14,955戸と、前年同期の10,055戸に対して48.7%増となっています。
借入済みの方が今すぐ確認すべき3つのポイント
金利が上昇局面にある今、既にローンをお持ちの方にとって重要なのは「現状把握」と「シミュレーション」です。以下の3点をご確認いただくことをお勧めいたします。
1. ご自身の金利が上がるタイミングを把握する
変動金利は各金融機関が定める「基準日」に応じて見直されます。多くの金融機関では基準日が4月1日と10月1日に設定されており、この基準日で決まった金利が2〜3ヶ月後の返済分から適用される仕組みです。 ご自身の契約書をご確認いただき、いつ・どの程度の影響が出るかを把握することが第一歩となります。
2. 返済額増加への耐性をご確認いただく
返済の途中で金利が上昇した場合を想定し、月々の返済額が増えても家計を圧迫しないか、繰り上げ返済で対応できるかなど、予め確認をしておくことが重要です。 たとえ0.25%の上昇であっても、長期のローン残高がある場合は月々の返済への影響は無視できません。具体的な数字でシミュレーションされることを強くお勧めいたします。
3. 借り換えのご検討は「早めに」動かれることが肝要
金融機関によっては、「引き下げ幅」を広げることで、結果的に借入金利の上昇を抑えている場合があります。 同じ変動金利であっても、金融機関によって実質的な適用金利には差がございます。借り換えのご検討は「損しているから」ではなく「最適化」の観点で取り組まれることが得策です。
まとめ
日本の住宅ローン金利は、長年の低金利・ゼロ金利政策から明確に転換し、「金利のある時代」へと移行いたしました。今後も緩やかな上昇が続く可能性は高く、変動金利をご選択されている方にとっては、これまでとは異なるリスク管理の視点が求められます。
ただし、大切なのはパニックになることではなく、正確な情報とご自身のライフプランに基づいてご判断いただくことです。金利の先行きに絶対の正解はございません。しかし「知らなかった」ことから生まれる損失は、「知っていた」上でご判断された結果よりもはるかに大きいものです。
住宅ローンは人生最大のお買い物に付随する、長期にわたるお約束です。今一度、金利の動向を正面から見つめ直す機会としていただければ幸いです。ご不安を感じていらっしゃるなら、それは行動するための良いサインでございます。
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